賃貸で週末だけ移住してみた

東京で働いてるけど週末は海のそばで生活したい!を試行しているブログです。海徒歩2分、ワンルーム。家賃5万円弱。意外と安く実現できたセカンドハウス生活を紹介します。

似てると思って「週末は田舎暮らし」を読んでみたら全然違ったはなし

先日、ダイヤモンドオンラインに以下のような記事が出ていました。

都市と田舎に同時に暮らす 「二地域居住」という生き方 【第1回】田舎がない。田舎が欲しい|週末は田舎暮らし ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記|ダイヤモンド・オンライン

どうやら南房総で山派の週末移住をしている方の本の紹介記事のようで、似たようなことをしてる人がいるんだな、山派の人の生活はどんな楽しさがあるのかなと思ってKindleで買って読んでみました。

で、読んでみたらライフスタイルが似てるどころか全然違ってびっくりして色々考えたので、今日はその辺をご紹介したいと思います。

 

読んだ本はこちら:(右側のKindle版がちょっと安い)

 

 

さて、まず私たちの週末移住生活と著者のそれとの共通点なんですが、

  • 都内在住
  • 金曜の夜に行って日曜の夜に帰ってくる
  • 移動時間は1時間半くらい

というのは同じです。

 

次に相違点なんですが、表面的なものを纏めると(左が著者で右が私たち)、

  • 山に週末移住/海に週末移住
  • 南房総/湘南
  • 購入/賃貸
  • 8700坪(!)/1K
  • 子持ち(開始時2人、現在3人)/DINKS
  • 車移動/電車移動

というあたりになります。

ちなみに巻末に東京R不動産の人のインタビュー記事があって、その中で「移住及び二拠点居住について検討しているエリア」のアンケートで1位が「房総エリア」2位が「湘南周辺エリア」という結果であったことが書いてあります。(だから「房総R不動産」「稲村ケ崎R不動産」なんですね。)

なので、人気のエリアに週末移住してみましたという点も一緒ですね。

 

予備知識はこの辺にして、「違う!」と思った内容について見ていきましょう。

 

 

1.広大な土地での田舎暮らし(山遊び)は楽しそう

著者は8700坪もの土地+築100年の古民家を「ポルシェが買えるくらいの値段」(1,000万くらい?)で購入したとのことです。子供達と一緒に虫や山菜を取ったり、週末農業(週末だけの世話で大丈夫な作物の栽培)をしたりと東京ではできない楽しみが目白押しで、特に良いなあと思ったのが敷地内にキジが卵を生んで、それを孵して成鳥まで育てたというエピソード。そんなことは到底都会や海辺ではできないので、これは凄いなという驚きがありました。

それから表紙に写真があるウッドデッキのスペースもとても素敵ですよね。アジアの高級リゾートみたいで、こんな場所で寛ぎたいと溜め息がでます。

 

 

2.しかし覚悟が必要すぎる

これが本当に凄まじくて、私が読んで思ったこととして週末の山暮らしに必要な覚悟は4点ほどあります。

  1. ほぼ毎週末、草刈りをし続ける覚悟
  2. 農家になって農地を手に入れる覚悟
  3. 地域の農家の方と濃い付き合いをしつつ、「いつちゃんと移住してくるの」と言われても折れない覚悟
  4. これだけハードだけど撤退しない覚悟

 

 

詳細を見ていきましょう。まず1つめ、「ほぼ毎週末、草刈りをし続ける覚悟」です。気候が良いのもあってぐんぐん野草が伸びるそうで、円盤形の刃のついた草刈機で全て刈ってしまわないと人も歩けない荒れ地になってしまうとのこと。さらに、

「今週はよく刈ったなあ!」と満足して帰ったとしても、翌週きてみると、ぞっとするほど元の木阿弥なのです。刈っても刈っても刈っても刈ってもぐいぐい生えるのは、五月から一〇月くらいの半年間。

ということで、それが8700坪ともなるとほぼ毎週末、相当量の肉体労働が避けられないということのようです。週末はだらだら、ぼーっと過ごしたい私にはこれだけでもちょっと無理。

 

次に2つめ、「農家になって農地を手に入れる覚悟」。著者の方の場合は購入した土地の一部が農地指定(=農地法の管理下)されており、「農地は農家同士での売買しか許されていない」ことから、不動産会社に紹介された地元の兼業農家の助けを借りて、農家になって農地を手にいれていました。端的に言うときちんと農地を管理していることを毎年チェックされ、検査をパスしないといけないということのようです。

なので農地を自分で耕し、雑草を取り、イノシシの害にあったら近隣の人とイノシシを退治して(!)、守っていかなければなりません。

さっき書いたのコピペしておきますね。

”ほぼ毎週末、相当量の肉体労働が避けられないということのようです。”

イノシシの退治ってそんな事できる気がしません。。

 

さて、大分ハードライフだという印象になったと思われるところで3つめ、「地域の農家の方と濃い付き合いをしつつ、「いつちゃんと移住してくるの」と言われても折れない覚悟」です。

著者の方は週末移住をはじめてすぐの頃、少し離れた酒屋さんを訪れたときの事をこう書いています。

(略)すみませ〜ん、とお店の人に声をかけると、「ひょっとして、あの家に今度入ったご家族?」と単刀直入に聞いてくるおばさん。

(略)「今度東京の人がこっちに越してくるんだって、みんな知ってるよう。移り住むんじゃないの?週末だけ?こどもの学校はこっち?」

(略)「早くこっちにちゃんと越してくるといねえ、かわいいねえ、こどもがいるってのはいいねえ。(略)」 

 と、こんなエピソードで始まり、その後集落の会合に出席して

「東京から来ました。週末しかおりませんが、なるべくご迷惑をかけないように、頑張ります。どうぞよろしくお願いします。」 

 と緊張して挨拶をしたところ、聞き取れない方言で

いつ本当にこっち越してくるつもりか?農地の管理やらなにやら大丈夫か?とたくさん質問されました。

(略)なんだかわたしは、ここに週末しかいないことが申し訳なくなってきました。

 とやり取りが続きます。

曰く、地元農家の方と密なコミュニケーションをとり、都度助けてもらいながら土地を維持することで、近隣農家に迷惑をかけないようにしないといけないとのこと。

ここで怖じ気づく人は結構多いと思うんですが、著者の方は物凄くて、まず、

それは、場所の歴史が細切れに断絶された都市生活での、アノニマス(匿名性)に生きる気楽さとは違う、つながる安らぎなのかもしれません。

と、この関係を「安らぎ」とポジティブに受け止めてしまう。そこでなおかつ、自分たちはこの集落で一番若くて一番将来にわたって長く関わる人間だから、高齢化や過疎化をなんとかしたい、とNPO法人を作って色々と活動を始めてしまう。とんでもないバイタリティです。

マンションの隣人ともコミュニケーションがあまり発生しないような都市在住者にとって、この現地コミュニティに入るというのが一番難易度が高いかもしれません

 

さて一通り凄さに驚いたところで、最後が「これだけハードだけど撤退しない覚悟」です。

この方の場合は賃貸ではなく購入だったんですが、加えて、売り主が「先祖代々守ってきた土地(墓付き)をちゃんと守ってくれる人に売りたい」という要望を持っていて、それに応えることを約束して購入した土地であったということも大きなファクターとしてあったそうです。

なので、子供が成長して都会での週末を望むようになっただとか、色々な日々の悩みをかかえながらも、基本は撤退しないという考えが書かれています。

 

この辺をもう少し一般化して考えるに、売り主の背景云々がなかったとしても、田舎の土地は購入してしまうと転売が結構難しいと思うんですよね。

さらにここみたいな高齢化が進んでいるところは今でも空家率がどんどん上がっていて、これからも更に上がり続けるだろうという場所なわけで、今後値崩れしないことを期待するのも難しいかと思います。

となると賃貸でと思うんですが、これについては巻末の東京R不動産の人が房総地域について

賃貸物件より売買物件のほうが圧倒的に数が多い

と言っているので、そもそも賃貸というオプションがほぼ存在しないという状況かもしれません。なので、売れない・撤退できない土地を所有する覚悟は避けられないのだと思います。

ちなみに房総は車でのアクセスになるので、仕事の忙しい旦那さんや部活のある中学生のお子さんが別行動でやって来るときには高速バスでの移動になるそうです。なるほどなあ。

 

著者は山の土地の購入を「結婚」に例えているんですが、この覚悟の多いところは言い得て妙だなと思います。

振り返って自分たちの週末移住を見れば賃貸でいつでも辞められるし、月5万円だし、普通のアパート暮らし以上の周辺とのコミュニケーションはないし、家具類も最低限しか買わないしと覚悟が必要な部分をとことん削り落としてやっているので、上記の結婚に対して「付き合いはじめてみた」くらいの感覚です。

 

そういった意味で「結婚」には「結婚」の良さが間違いなくあるんだろうけれど、やっぱり「お付き合い」せずに「結婚」するのはリスキーすぎる気がします。

著者は非常に多くの不動産を見て選んだそうですが、言って見ればそれは多くの人と「お見合い」して、これと思った人と交際期間ゼロでいきなり入籍したみたいなものだと思うんですよね。それで、結婚してみたら想像していたよりずっと家事大変だし義実家との付き合いも濃密だったけどそれは苦にならないタイプだったので幸せです!みたいな。それはそれで良いという人もいると思いますが、個人的にはまずどうにかして賃貸で始められないか模索して(農家に下宿・間借り交渉)、それで住んでみて良さも大変さも分かって覚悟を決めてから購入するといったステップを踏んだ方が良いように思います。

 

 

まとめ:この人と同じ条件で山派の週末移住をするのは厳しそうだけど…

すごく楽しそうだけど同時にすごくハードモードっぽい山派の週末移住について見てきましたが、この人みたいな人が敷地内にコテージかなんか建てて、そこを賃貸することができたら皆ハッピーで良いだろうなというのが私の感想です。草刈その他のハードすぎることは管理費・共益費を納める代わりに管理人さんに委託するような形でハードルを下げるやり方もあるんじゃないでしょうか。

そういう形で色々な覚悟を決めずに実現できるようになれば山派の週末移住はもっと素敵なものになるような気がします。逆に言うと、著者と同じ形で実行するのは相当のバイタリティがないと大変だと思います。

本自体はなんと言うか、山賊ダイアリーみたいな「都会人には想像もつかない田舎の楽しいハードライフ」という感じで読み物としてとても面白いと思いました。

 なので、書評として私の結論は、

  • ハードモードな週末田舎暮らしを知る読み物として面白い
  • でも実際に真似するのはあんまりお勧めできなそう
  • 山派の週末移住をしたいと思っている人はどれだけハード(かつ楽しい)かを知るために読むべき

です。